ない ない ない なぃ~ ・・・
エコーをはじめた頃はよくありました。
「すみません、肝臓がないんです」
「ごめんなさい、胆嚢みつかりません」
「なんか左腎がないみたいなんです」
「今度の患者さんも膵臓どこにあるのかわかりません」
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初心者のための無料超音波セミナー
そう・・・ 臓器がないっ! んです。
こんなことって、腹部エコーにしかありません。心臓だって、体表臓器だって、臓器がないなんてことは、まずありえない (??; 手術で摘出したとか、先天的にもっていない場合は別として、本当は「ある」のに見つからない!
こんな時、熟練した技師にかわると・・・
プローブをあてたとたんに臓器が「パッ」っとでてくる。
初心者と何が違うのでしょう?
「経験」? もちろんこの差は大きいですね。
でも経験だけじゃありません。
一番多いのが「解剖」 特に臓器と周囲組織の立体的な位置関係がわかっていない場合が多い。
膵臓がいい例です。
膵臓は、もともと周囲組織とのエコーレベルに差が少なく、境界がわかりにくい臓器です。また、体型によって体表面からの深さも千差万別。さらに消化管内のガスで邪魔されやすいときてます。描出しにくい条件が3拍子揃っているわけですね。
では、熟練者はどうやって膵臓を簡単に描出できるのでしょうか?
それは腹部の「解剖学的な位置関係」が頭に入っているからです。肝臓と膵臓の位置関係、胃と膵臓の位置関係、大動脈、下大静脈との位置関係・・・。
これらから膵臓の深さや位置の見当をつけます。そして門脈、上腸間膜静脈、脾静脈、腹腔動脈、上腸間膜動脈と、膵臓周囲にある脈管を頼りに膵臓を描出します。こうすることによって、ごく短時間で、どんな状況下でも膵臓の位置を特定することができるのです。
そしてプローブの扱いをはじめとした超音波装置の使い方。これでもかなり変わってきます。でも基本的に手技は「距離」と「窓」、さらに設定調節の方向性でしょうか。。
つづく
腹部臓器の描出・・・
最初は、これに手間取ってしまうことが多いようです。
どうやれば簡単に描出できるのか?
こんなことをちょっとやっていきますので、乞うご期待!
◆編集後記
▽固定できない?
エコーは病理組織をイメージしながら検査を進めていく必要があります。
手術や内視鏡検査などで取り出された組織や臓器は「病理検査」を行います。病理検査は、採取された「組織」や「臓器」を薄くスライスして染色したスライド標本をつくり、それを顕微鏡で見て診断する検査です。
そして「これは癌だ」とか「良性の腫瘍だね」とか「炎症をおこしています」など、病気の診断をするための検査ですね。一般的には、病理検査や細胞診の結果がそのまま疾患の確定診断になります。つまり、病理検査で「癌」という結果が出て、そこではじめて「癌」と診断されるわけですね。
ですから、血液検査やレントゲン、エコーなどの検査によって強く癌が疑われて手術をしたけれども、取り出された組織を病理検査で詳しく調べてみたら、実は「癌ではなかった」ということもあるのです。(怖っ)
病理検査で大切なことは、採取した組織や臓器ができる限り体の中にあった時に近い状態で標本をつくることです。生体から取り出された組織は、すぐに自己融解が始まりますので、それを防ぐための工程が必要になります。
の工程を「固定」といいます。
具体的には、取り出された組織や臓器をすぐにホルマリンやアルコールに「ボチャン」と漬けるだけです。(^^)
ホルマリンやアルコールに漬けられた組織や臓器は「自己融解」が止まります。この固定は、組織が体の中から取り出されて、すぐに行なわれますから、実際に行なうのは手術や内視鏡の現場にいる医師や看護士さんのことが多いみたいですね。
手術室で切り取られた胃や腸などは、木の板にピンで貼り付けられてホルマリン等に固定されます。(まるで昆虫の標本です!)
内視鏡検査で採取された胃や腸のポリープは、数センチの大きいものから1~2ミリの小さなものまであります。一回に複数個採取されることもありますから、小さなものがなくならず、どこから採ったものかが後からわかるように「ろ紙」に貼り付けてからホルマリン等に固定します。
今日、看護士さんが検査室にやって来て言いました。
看:「内視鏡でとった胃のポリープを病理検査に出したいんだけど
うまく固定できないのよね。」
私:「えっ 固定できないんですか?」
「ホルマリン切らしちゃったとか?」
看:「違うわよ!」
「だから固定できないの!」
私:「でも、固定ってホルマリンに入れるだけですけど・・・」
看:「えっそうなの」
「ろ紙にくっつけることじゃないんだ」
私:「・ ・ ・ 違うんです」 (^^;