初心者のための無料超音波セミナー
前回の編集後記のクイズ?を当てた人がいました!
私が5月29日に「日本科学未来館」に行った理由は何故でしょう?です。
すぐに数名の方からメールをもらいました。みなさん大正解です (^^)
5月29日には「日本超音波検査学会」が東京ファッションタウンTFTホールで開催されていたんですね。
そこに参加した時、近くにある日本科学未来館に立ち寄ったわけです。「学会行ったのに何してんの?」なんていわれそうですね。
いやぁ~ いすに座り続けたためにお尻が痛くなっちゃったことと、あんまり天気が良かったので、ついフラッと…ね。
皆さん、たまには息抜きも必要です。た・ま・に・は ですよ。
▼簡単なようで難しい「胆嚢」3
さあ、息抜きの後はまじめに勉強しましょう! 今回は「胆嚢結石」です。
胆嚢の超音波検査「胆嚢結石」
腹痛の原因の一つに胆嚢結石があります。中でも右の背中に鈍い痛みがある場合の原因が胆石だったということはよくあることですね。
胆嚢結石といえば・・・
そうです! 「音響陰影(acoustic shadow)」ですね。
どうですか?
すぐ頭に浮かびましたか? ⇒「音響陰影」
それでは、ここで
▼誰もが嫌いな超音波の基礎 その4
音響陰影はエコーのアーチファクトで代表的なものですら、簡単に説明しておきますね。
超音波は強い反射体があるとその先に通り抜けることができませんので、反射体表面でほとんどがはね返されてしまいます。ということは、もちろんその先に何があっても、その成分は表示されません。
ですから、強い反射体の後方は「真っ黒」になってしまいます。これが音響陰影の正体です。
骨の場合も同じです。人の骨は超音波を強く反射しますので、同じ原理で、その後方は「真っ黒け」になります。
じゃあ硬いものは超音波を反射するかというと…
まあ大体そうみたいですけど…
実際は「硬い」「軟らかい」には関係ありません。関係するのは音響インピーダンスの差です。
↑
なんだそりゃ?? (次の機会に説明しますね)
では、高い周波数のプローブを使った時に、画面の下方が黒くなるのは?
これは減衰によるもので、反射ではありませんので間違いないように!(第6号「誰もが嫌いな超音波の基礎 その3『周波数』をみてね)
話を胆石に戻します。
胆石は胆汁の成分からつくられていて、一口に「胆石」といっても様々な種類があります。
種類によっては「音響陰影」を伴わないものがありますからポリープと区別する必要があります。ポリープとの違いは身体の向きを変えたときに胆嚢の中で動くかどうかです!←重要です!
胆石は普通 胆嚢内でゴロゴロと転がっていることが多いのですが、胆嚢の壁にへばりついているようなものもあります。
判断に迷ったときはグリグリ押してみたり、患者さんに体位を変えてもらったりして動かす努力も必要なことがあります。
続いていきます!
胆石はコレステロール系と色素系そして稀石に分類されます。
さらにコレステロール系は純コレステロール石・混合石・混成石に、色素系はビリルビンCa石・黒色石に、稀石は炭酸Ca石・脂肪酸Ca石に分けられるのです。
そして超音波検査では、これらを分類することが可能なんですね。
「3cmの胆石がありました!」
「患者さんけっこう痛そうです!」
これで終わらせてはいけません! なぜかというと、純コレステロール石と混合石は薬で溶かすことができるからです。手術して胆嚢を取ってしまう必要がないかもしれないんですね。
さらに続きます!
胆石が原因となって合併する病気があります。
一つは「胆嚢炎」これは前々回話したので、もうお解かりだと思います。胆嚢の頸部にある小さな結石を見落とさないよう注意しましょう。
そして「胆嚢癌」にも注意しなければなりません。
胆石によって継続的に胆嚢の壁が刺激を受けると胆嚢癌が発生する原因にもなります。胆石を見つけたときは必ず動かして、その後ろの胆嚢壁を観察しましょうそこには癌ができているかも!!
まだ続くよ!
巨大な結石や胆嚢に充満した胆石では胆嚢内が描出されないことがあります。このときに「胆嚢は描出できませんでした」なんて報告をすると、あとで夜中に急性胆嚢炎で運び込まれたりしますので、患者さんのためにも、そんな間違いはしないでくださいね。
「胆嚢が描出できません」なんてことは、ほぼないですから…。
そうそう、総胆管結石なんてこともあるので、胆嚢に結石が無かったからといって安心しないで、胆道もちゃんと一通り拡張していないか、胆管結石が存在しないか確認して下さい。
ということで「胆石」で大事なことをまとめると、
1.癌やポリープなどの隆起性病変と鑑別しよう!
2.胆石の種類は?
3.胆嚢内いっぱいに詰っていませんか?
4.総胆管も確認しよう!
5.胆嚢炎を起こしていないかな?
6.結石の後壁みました?
です。
ここまでお付き合いいただいた方、ありがとうございます。長くなりましたが胆嚢結石についてでした。
おまけ
「胆石の症状」
右季肋部あるいは心窩部の仙痛発作、発熱、黄疸の三主徴が知られますが、不定愁訴あるいは無症状胆石(silent stone)も多くみられます。
「疾患と胆石」
肝硬変と溶血性貧血等では黒色石が多い。(ビリルビンの過剰産生)
糖尿病ではコレステロール石を合併することが多い。(脂質代謝異常)
胃切除後にはビリルビンCa石が多い。(胆汁のうっ滞)
胆石の種類によるエコーの特徴は必ず確認しておいてくださいね。 ⇒ おすすめの本です
◆懺悔コーナー
▽右?左??
超音波検査で画面に映し出される像は、からだの断層像です。
上・下・左・右の向きをどのようにでも表示することはできますが、みんなが好き勝手な表示をしていたら、診断する医師はすごく困ってしまいますね。
そこで超音波検査では、画面に表示する方向がきまっています。たとえば腹部であれば、縦断像は画面に向かって頭側を左に、足側を右に横断像ではからだの右側を画面左に左側を画面右にという具合です。
困るのは最近よくやられるようになってきた「血管エコー」です。各種学会によって推奨する表示方法が違うんですね。
腹部のように頭側を左に表示しろ! という学会もあれば、心臓を中心にした表示法をやれ!という学会もあります。
まったく困ったものです・・・。
特に頚動脈エコーをやっている時、甲状腺に所見があった場合は頚動脈と甲状腺で表示が逆になってしまったりするんですよね~。これ、主治医が見てわかるかなぁ?ってことになります。
どっちかに統一してくれ~! あれっ そういえば ここは懺悔コーナーでしたね。
反省しないと…
先日「右腎臓結石」を「左腎結石」と報告してしまいました。主治医が気が付いて「これ逆じゃない?」といってくれたのでわかったのですが…。
今回のは、すぐに大きな事故につながるとは思いませんが、こういう左右の間違いって、とっても危ないですよね。
今後気をつけたいと思います! ゴメンナサイ m(_)m
皆さんも気をつけましょう。