腹部エコー 検査報告書(検査所見レポート)の書き方

腹部エコー 検査レポートの記載

腹部エコー初心者で「超音波検査所見の書き方」や「検査報告書の記入の仕方」はどうしたらいいの?という質問をよく受けます。すでに報告書の形式が決まっている施設では特に困ることはないのかもしれませんが、報告書のフォーマットのない病院で働いている方にとっては悩みどころかも知れませんね。

まずは腹部エコーで検査する各臓器のチェックポイントを観察して、異常所見があるかどうかを確認することが大切です。長くなりますが、一つ一つ書いてみますので参考にしてみて下さい。

あ、報告書や検査所見レポートを書くときに役立つはカルテ用語や英語、略語などをまとめた用語集をつくりました。必要な時にお役立てください!

検査所見用語集(英⇒和)

検査所見用語集(和⇒英)

肝臓(Liver)

肝臓エコー検査におけるチェックポイントと所見の記入例です。

肝臓の超音波像 肝臓の大きさ 肝臓の大きさは性別や年齢、体格によって様々ですから、腫大や萎縮の判定は難しい場合が少な...

大きさ(size)

腫れていないか? 萎縮はないか?というところを見ます。腫れるのは急性肝炎や脂肪肝を考えたいところ。萎縮は肝硬変や劇症肝炎が考えられます。

萎縮 atrophy
腫大 swelling、hepatomegaly

(右肋間走査 肝硬変による萎縮+腹水)

肝縁(edge)

肝臓の縁は正常だと鋭角なのですが、慢性肝炎や肝硬変で鈍化する傾向にあります。また腫れている場合も肝縁は鈍化しますので、ベースに腫大があり、かつ肝縁が鈍化がみられる場合は急性肝炎を考えたいところです。

鋭角 shape
鈍化 dull

(心窩部縦走査 肝縁鈍化)

肝表面(surface)

正常ではキレイで滑らかな肝臓の表面が肝硬変などでは再生結節による細かい凸凹不整がみられます。

regular、smooth
不整 irregular

(肝表面の凸凹不整+腹水 肝硬変)

肝実質エコー(parenchyma echo、internal echo)

肝臓内部の細かい点状エコーはスペックルパターンといわれ、このスペックルの細かさを観察します。慢性肝炎や肝硬変では粗くなる傾向にあります。

fine
粗雑 coarse、rough

(肝実質の粗雑化)

また、肝臓内部の輝度や均一性も併せて観察します。輝度が高くなっているケースでは脂肪肝を疑い、輝度が不均一になっている例では限局的な脂肪沈着が考えられます。

正常輝度 normal
高輝度 bright

(高輝度肝)

均一 homogeneous
不均一 heterogeneous

占拠性病変(SOL)

石灰化や結石、腫瘍、膿瘍などの有無を記載します。占拠性病変(SOL)を発見した場合には肝区域(クイノーの区域で表記)のどこにあるのか?そして大きさや特徴も記載します。

例)肝S5に12×12mm、hyper echoic rim および PEE(後方エコ-増強)を認めるhyper echoic mass (+)

脈管の異常所見

肝動脈、肝静脈、門脈、肝内胆管等の肝内脈管に異常所見(拡張像、血栓、腫瘍塞栓、短絡等)がないかを検査します。

(肝左葉の著明な胆管拡張)

肝周囲の変化

肝臓の周囲の液体貯留(腹水、胸水、出血など)がないかどうか、リンパ節腫脹の有無等をみます。

(腹水:ascites)

胆嚢(Gall Bllader)

胆嚢エコー検査でのチェックポイントと所見の記入例です。

胆道系の基礎 胆道系を理解するために、まず解剖的な事項について知っておきましょう。 胆道とは、肝細胞から分泌された胆汁が十二指腸に流...

大きさ(size)

腫れていないか? 萎縮はないか?というところを見ます。腫れるのは急性胆嚢炎や三管合流部より下流(総胆管や膵、十二指腸乳頭等)の胆汁通過障害を考えたいところ。萎縮は慢性胆嚢炎や食後胆嚢が考えられます。

萎縮 atrophy
腫大 swelling

(腫大した胆嚢)

胆嚢壁肥厚(wall thickness)

胆嚢に炎症があったり、低蛋白血症、腺筋腫症、腫瘍等で胆嚢壁が肥厚する傾向にあります。

肥厚なし -、n.p
肥厚 +、(  )mm

(胆嚢体部~底部の壁肥厚 腺筋腫症)

胆嚢結石(stone)

胆嚢内に結石がないかどうかを記載します。結石の存在を確認した場合は、部位、サイズ、ASの有無、種類等も併せて記載します。胆嚢壁の肥厚チェックも忘れずに。

結石なし
結石あり +、(  )mm

(音響陰影:ASを伴う混成石)

胆泥・debris

胆嚢内腔に胆汁成分が濃縮、砂泥状に溜まっていたり、炎症性物質によるモヤモヤエコーがないか確認します。

なし
あり

(胆泥)

隆起性病変(polypoid lesion)

ポリープや腫瘍がないか観察します。隆起性病変を確認した場合は、部位、サイズ、特徴(有茎性、桑実状、広基性、輝度等)も併せて記載します。

(胆嚢ポリープ)

胆管(Bile duct)

胆管エコー検査のチェックポイントと所見の記入例です。

拡張の有無(dilatation)

胆道の通過障害や閉塞、炎症等により胆管の拡張がみられるケースがあります。病的な拡張の有無をチェックし、内腔に腫瘍や結石等がないかも観察することが大切です。

拡張なし -、n.p
拡張あり +、(  )mm

占拠性病変(SOL)

胆管内に占拠性病変(腫瘍や結石)がないか、存在の有無を確認します。

膵臓(Pancreas)

膵臓エコー検査でのチェックポイントと所見の記入例です。

膵臓の解剖 膵臓の超音波解剖です。 膵臓は大12胸椎の高さで後腹膜腔に位置し、十二指腸の内縁から脾門部までを横走する...

大きさ(size)

症状も考慮しながら腫大、萎縮の有無を検査します。腫れていれば急性膵炎を、萎縮は慢性膵炎を疑います。

萎縮 atrophy
腫大 swelling

膵実質エコー(parenchyma echo、internal echo)

膵実質の均一性、スペックルの粗さ等を評価します。脂肪沈着や線維化により輝度が上昇する傾向にありますが、有意な所見とはみなさないことが多いようです。

(膵実質の高輝度化)

主膵管(MPD)

膵管等の有無をチェックします。炎症や腫瘍、結石等により膵管の拡張を認めることがあります。拡張をきたしている場合は形状(整、不整、数珠状等)も大切な所見となります。

拡張なし -、n.p
拡張あり +、(  )mm

(膵頭部腫瘍による主膵管の数珠状拡張)

拠性病変(SOL)

腫瘍や結石等の有無を検査します。

なし
あり +、( × )mm

(膵体~尾部の嚢胞性腫瘤:cystic mass)

脾臓(Spleen)

脾臓エコー検査のチェックポイントと所見の記入例です。

異常像のチェックポイント まず大きさと形をみましょう。 「全体に大きくなっていないか」「辺縁の鈍化はないか」といったところです。大き...

大きさ(size)

門脈圧の行進や感染症、血液疾患、悪性腫瘍等で脾臓が腫れるケースがあります。脾腫の有無は大切な所見となります。脾腫の評価にSpleen Indexを用います。

す。

脾腫なし
脾腫あり +、SI(   )

(千葉大学内科の式)

(古賀の式)

占拠性病変(SOL)

転移性腫瘍、悪性リンパ腫、膿瘍、嚢胞性腫瘤、石灰化等をチェックします。

なし
あり +、( × )mm

(低エコー腫瘤:hypo echoic mass)

その他

胸水や腹水の有無、脾梗塞等も状況により詳しく観察します。異常所見ではありませんが、副脾も所見欄へ記載しているケースが多いようです。

腎臓(Kidney)

腎臓エコー検査におけるチェックポイントと所見の記入例です。

腎臓の解剖と正常超音波像 解剖は専門的な医療用語が多く、なかなか頭に入りにくいところですが、「臓器がどの辺りにあるのか?」...

大きさ(size

腎臓の腫大は急性腎炎、萎縮は慢性腎炎や腎不全で認めます。片側欠損においては欠損側と反対側の腎臓が代償性に大きくなる傾向にあります。

(萎縮した腎臓)

水腎症(hydronephrosis)

腎盂や腎杯、尿管の拡張がないか調べます。

(水腎症 腎盂、腎杯、尿管の拡張を認めます)

占拠性病変(SOL)

結石や腫瘤の有無を検査します。

その他

ルーチンで検査する項目に入れるかどうかは、検査目的や症状、また施設によって異なると思いますが、下記項目も必要時にはチェックしましょう。

膀胱(Bllader)

膀胱壁肥厚や膀胱結石、腫瘍の有無の検索等。

前立腺(Prostate)、子宮(Uterus)、卵巣(Ovary)

前立腺肥大、腫瘍

血管

動脈瘤(aneurysm)、解離(dissection)、血栓(thrombosis)、狭窄(stenosis)、閉塞(occlusion)などなど。

リンパ節

腫脹の有無や転移が疑われるケースにおいてはしっかり検索します。

液体貯留

腹部エコーでは腹水(ascites)、胸水(pleural effusion)、出血(bleeding)等のチェックも大事なポイントとなります。肝周囲、脾周囲、モリソン窩、ダグラス窩等に目を向けましょう。

腹部エコー検査報告書フォーマット例

【肝臓:Liver】

size(normal ・ swelling ・ atrophy)
edge(shape ・ dull)
surface(regular ・ irregular)
internal echo(fine ・ coarse)
fatty change(- ・ +)
SOL(- ・ +)

【胆嚢:Gall Bllader】

size(normal ・ swelling ・ atrophy)
wall thickness(- ・ +)
polypoid lesion(- ・ +)
stone(- ・ +)
debris(- ・ +)

【胆管:Bile duct】

dilatation(- ・ +)
SOL(- ・ +)
stone(- ・ +)

【膵臓:Pancreas】

size(normal ・ swelling ・ atrophy)
MPD dilatation(- ・ +)
SOL(- ・ +)

【脾臓:Spleen】

splenomegaly(- ・ +)
Spleen Index(      )
SOL(- ・ +)

【腎臓:Kidney】

Rt)
size(normal ・ swelling ・ atrophy)
hydronephrosis(- ・ +)
SOL(- ・ +)
stone(- ・ +)

Lt)
size(normal ・ swelling ・ atrophy)
hydronephrosis(- ・ +)
SOL(- ・ +)
stone(- ・ +)

【その他】

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