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腹部エコー検査のやり方!
超音波検査は「効率よく・短時間で・正確に」行いたいものです。
そうは言っても、腹部エコーでは検査範囲も広くエコーの邪魔となる骨や気体もあちらこちらに存在します。また患者さんの年齢や体格、臓器の位置もそれぞれ異なり、呼吸調節や体位変換ができないようねケースもあるため、その都度適切な処置やスキャン技術が求められる領域ですね。
効率よく・短時間で・見逃しなく腹部超音波検査を行うためには、検査の方法(やり方)、検査順序が非常に大切になります。
腹部エコーは検査方法(やり方)や、検査する順番も色々ありますので、どのような検査の順番・方法で行うかといったことは、施設ごと・自分なりに手順を確立する必要が出てくると思います。
腹部エコー検査手順
腹部超音波検査には完全に確立された検査手順というものはありませんが、超音波に関する学会(日本超音波医学会、日本超音波検査学会)で推奨される検査手順がありますので参考にしてみると良いと思います。また、上記学会では腹部超音波検査に関する診断基準や走査の標準化も検討・公表されていますので、ぜひ一度は目を通しておくことをおススメします。
ただ、前述したように患者さんの状況によっては決められたルーティン通りでは上手くいかなかったり、逆に効率が悪くなったりといったケースも多く見受けられるため、自分なりにいくつかのパターンを作っておくことも必要です。
また、どのようなケースにおいても最善の手順で行なえる「魔法のMyルーティン」を習得しておくことができればベストですね。
ちなみに、ボクの腹部エコーのルーティン(検査する順番)です。
- 肝臓
- 胆道(胆嚢と胆管)
- 膵臓
- 右腎臓(副腎)
- 左腎臓
- 脾臓
- 腹部大動脈
- 下腹部
- その他
腹部エコー検査を行う上で、肝臓左葉を見て、腹部大動脈をみて、膵臓見て、胆嚢いって、今度は肝右葉にいって・・
というように、あまり臓器をあっちこっちと行き交ってしまうと、まとまりがつかなくなってしまうことと、全体を系統立てて考えにくくなってしまうことから、上記のような順序に落ち着きました。左腎や脾臓を最後に検査するのは、検査対象が高齢者・肥満体型が多いと左側臥位を多用するため、ゼリーを検査の途中で拭き取らなくても済むからです。
スクリーニングの腹部エコーでは検査報告書の記入を含めて平均の検査時間は10分程度といったところでしょうか。
肝臓の検査方法
心窩部縦走査で肝臓を左から右へ扇状にスキャンします。続いて心窩部、肋骨弓下横走査で左葉の端からスタートして右葉まで扇+スライドにてスキャン。その後、右肋間走査で右葉を再度チェックしていきます。※肝右葉が下がってこない方に対しては右肋骨弓下横走査時に左下横臥位になってもらって検査しています。
胆嚢・胆管の検査方法
肝内胆管に関しては肝臓の検査時に確認しているため、ここでは胆嚢や総胆管のチェックを行います。仰臥位で検査ができれば呼吸の調節で胆嚢を長軸と短軸でチェックします。胆嚢は右肋間も有効に使えることが多いと思います。総胆管は長軸で可能な限り膵内まで確認していきます。門脈をメルクマールにできるだけ素早く描出します。胃や十二指腸のガスで検査に支障がある場合は体位変換(左側臥位)や圧迫、別の位置からのアプローチで対処します。
膵臓の検査方法
心窩部横走査、縦走査で検査を行います。頭部や尾部は胃や十二指腸内ガスの影響を受けやすいので、必要に応じて呼吸や圧迫、体位変換で対処します。症状によってリンパ節や側副血行路、腎動静脈等、消化管(胃や十二指腸)にも目を向けていきます。
腎臓の検査方法
右腎は呼吸の調節で尾側へ下げてもらい、縦走査、横走査でスキャンを行います。腹側から背側へとアプローチ部位も変えてスキャン。併せてモリソン窩、肝腎コントラスト、右副腎のチェックも行います。
左腎は基本的には背側からのアプローチで縦横スキャン。上極は脾臓を窓にして副腎とともに再チェックすると良いと思います。
脾臓の検査方法
左腎と同様に背側アプローチが基本で、斜めにプローブをあてると肋骨を避けられると思います。上部は肺が邪魔しやすいため、呼吸とプローブ位置の調節が大切ですね。併せて液体貯留(胸水、腹水、出血)の有無や膵尾部のチェックも行います。
腹部大動脈の検査方法
スクリーニングでは動脈瘤や動脈硬化、狭窄等について肝背面から腸骨動脈まで縦走査で確認します。必用に応じて横走査をプラスします。救急エコーでは解離や動脈瘤の破裂等のチェックも欠かさず行います。
下腹部の検査方法
膀胱や前立腺、子宮、卵巣等の骨盤内臓器を横と縦走査にてチェック。
チェックポイント
各臓器のチェックポイントは「腹部エコー検査報告書(検査所見レポート)の書き方」のページで紹介していますので、ご確認下さいね。