肝臓の超音波像
肝臓の大きさ
肝臓の大きさは性別や年齢、体格によって様々ですから、腫大や萎縮の判定は難しい場合が少なくありません。
腫大は急性肝炎の極期や脂肪肝、アルコール性肝炎等でみられます。萎縮の典型例は劇症肝炎です。肝硬変の場合は肝左葉や尾状葉が腫大し、肝右葉は萎縮する傾向にあります。
肝縁
正常の肝臓では肝縁が鋭角ですが、慢性肝炎から肝硬変までの病態に相関して肝縁先端部分の鈍化~肝臓全体が丸みを帯びてきます。また、肝臓が腫大をきたす急性肝炎の極期や脂肪肝、アルコール性肝炎では、肝縁の鈍化がみられます。
表面
肝臓表面の不整は「慢性肝炎」や「肝硬変」の診断には欠かすことのできない所見です。表面は「整」「不整」と表現しますが、微細な不整から大きな凹凸まで様々な超音波像を示します。
実質のエコーレベル
Bモードにおける肝臓のエコーレベル(輝度)は腎臓の実質と同じか、やや高く、脾臓実質と同等です。脂肪肝やアルコール性肝炎ではエコーレベルが高くなり、急性肝炎ではエコーレベルの低下がみられます。
体脂肪の多い場合や筋肉質などの場合は超音波の減衰が大きく、肝臓実質のエコーレベルが低くなることがあるので注意が必要です。
肝臓内の脈管
肝臓内には動脈、静脈、門脈、胆管が走行していますが、それぞれ拡張、狭小化、不明瞭化所見が診断に役立ちます。
肝硬変では脈管の狭小化や太さの不同がみられます。脂肪肝では肝細胞への脂肪沈着により、脈管が不明瞭になります。うっ血肝では肝静脈の著明な拡張がみられます。肝静脈の拡張が見られた場合は深呼吸などによって血管径が変化しないことを確認します。
肝外胆管の閉塞によって肝臓内胆管に拡張がみられます。
肝臓周囲の所見
疾患の原因が肝臓にあったとしても、周囲臓器に影響を及ぼすことが多くみられ、それら肝臓周囲の所見は超音波診断において非常に有意義な情報をもたらします。
主な肝臓周囲の所見には次のようなものがあります。脾腫、側副血行路、腹水、リンパ節の腫大
腫瘤性肝疾患所見
肝臓実質内に腫瘤性病変を認めた場合は、複数方向からの観察と腫瘤の性状、数、腫瘤周囲との関係を詳細に観察する必要があります。
腫瘤の性状は特に重要です。腫瘤の超音波像によって診断が可能な病変は多いのです。腫瘤の性状は、次のような事項について観察します。
形状、内部エコー、境界、辺縁、後方エコー、外側陰影