こんにちは!
最近たくさんのメールをいただきます。皆さんからいただいたメールには、できるだけ早く答えるよう 努力しています。 (もちろん100%返信してます)
多い内容は、「教えてもらえる人がいないのですが、どうしたら いいでしょう?」と「セミナーの情報教えて!」です。
いま50通ほど たまっています。頑張って返信していますので、もう少しお待ちくださいね。
初心者のための超音波検査セミナー
先週につづき またまた他の人の言葉を借りちゃいます。
今回は私の“師匠”の出番です。
しかも勝手に使わせてもらいました!
事後承諾でOKですよね?
○○センセ~♪ (^^)V
「超音波診断はリアルタイムだからいいんです!」
48歳の男性。
軽い腎機能の低下を指摘され、腹部超音波検査の依頼がやってきました。
腎臓のスキャンを行う前に腎の超音波像を把握しておきましょう。正常腎の超音波像は、エコーレベルの高い腎中心部エコー(※)があります。腎臓の実質は肝臓のエコーレベルより低いか等しい。
※ 腎洞内の血管、腎盂、腎杯、神経、脂肪などにより強い反射が生じ、central echo complex、略してCEC とも呼ばれる。
さらに腎実質では皮質よりエコーレベルの低い髄質を認め、皮髄境界を弓状血管が走行しており、弓状血管はスキャンのされ方により、2本線(tram-line)であったり、近接する2点であったりする。
弓状血管より末梢はBモード像では認識できないが、カラードプラとくにパワードプラでは小葉間動静脈も良く見える…等々。このようなことを頭に描きながら、腎をスキャンしてみる。
患者さんの腎髄質は皮質よりエコーレベルが高く、高エコーとなっており、一部音響陰影も出現している。これは、いわゆるhyperechoic medulla (腎髄質高輝度エコー像)の所見であり、音響陰影も出現していることより、石灰化を来たしていると考えられ、medullary nephrocalcinosis の診断がつく。
この原因疾患は下記の如く、様々なものが鑑別に上げられる。
痛風腎,Lesch-Nyhan Syndrome,副甲状腺機能亢進症,Wilson disease,giycogen storage disease type XI ,サルコイドーシス,ビタミンD過剰症,骨髄腫,乳頭壊死,medullary sponge kidney,ミルク-アルカリ症候群,クッシング症候群,シェグレン症候群,Bartter’s syndrome原発性アルドステロン症,Pseudo-Bartter’s syndrome
これで超音波検査を終了し、medullarynephrocalcinosis の診断とし、その鑑別疾患を上げるのは、スクリーニングとしての超音波検査の域にとどまる。
さらにリアルタイムの利点を生かし、精査としての超音波検査を行なえば、確定診断をつけることが可能である。実際、私の経験上腹部領域の大方は超音波検査のみで確定診断がつくのである。
そこで、次にどうするか。
プローブの切り換えスイッチを押し、高周波のものに変化させて、頸部を観察してみる。
はたして、甲状腺左葉、下極側の背側に接して、楕円体状の低エコー腫瘤を認めた。これにより上皮小体の腺腫であることが判明した。
検査中、上皮小体(*)が腫大しているかも知れないということを念頭におき、その上で頸部を精査しなければ、hyperechoic medulla の原因もわからなかったわけで、これは超音波検査が有用であるということを示す一方、検者の技量により、その診断が著しく左右され るということも示している。
*内科系では副甲状腺というが、正確には上皮小体が正しい。というのは、副甲状腺とは甲状舌管が 降下して甲状腺を作るとき、その途中に甲状腺と同じ組織が遺残することがあり、これを副甲状腺(accessory thyroid)と呼ぶからである。
どうですか?
内容が難しいと思いますので、ちょっと解説します。
まず、検査を始める前に対象部位の正常エコー像を頭の中で整理することが大切です。もちろん解剖学的な知識も知っておかなければなりません。
そして実際の検査を始めます。
検査で正常ではない所見があった場合は、そのエコー像をしっかり観察してしましょう。
今回の例では、
1、腎髄質は皮質よりエコーレベルが低いはずなのに逆転している
2、一部に音響陰影をともなっている
ですね。
次に検査で得られた所見から、原因疾患を考えましょう。これには病気や疾患に関する知識が必要です。
ここである程度の結果がでました。
患者さんの腎髄質はエコーレベルが高く、音響陰影もともなっていることから石灰化をきたしていると考えられ、これが原因で腎機能が低下しているのではないか。
実際の検査では、ここで終わってしまう場合がほとんどですが、本当の超音波診断は“この先”が重要なのです。
腎髄質に石灰化をきたす疾患を考え、さらに検査を進めて原因を特定することができます。これは「リアルタイム検査」だからこそできるのですね。
実は、この患者さんの腎機能低下の原因は上皮小体の腺腫でした。スクリーニングとしては「腎髄質の石灰化による腎機能低下」。これでも充分に超音波診断の役割を果たすのでしょう。
でも、超音波診断には、まだまだ先があります。そして、検者の技量により診断が著しく左右されてしまうのです。ここまでの診断ができるまでには、
「知識」が必要です。
「技術」が必要です。
さらに「経験」が必要です。
たいへんな道のりですね。でも、そんなに難しいことではありません。時間もそれほどかからないと思います。最短距離で行ける道を知っていればね・・・
◆編集後記
昨日、これからエコーをはじめる技師が超音波の基礎を勉強していました。
何をやっているかとのぞきこむと、あるメーカーが提供しているDr○○○○の公開講座のCDを見ています。(超音波の基礎をとてもわかりやすく説明していますので、ぜひ参考にしてみて下さい。)
その技師は「音響レンズ」のところを一生懸命(?)見ています。
「わかる?」と聞くと、「何となく・・・」という返事。
「えっ 画像や絵を使ってこんなにわかりやすいのに・・・」
よく聞いてみると、「音響レンズ」はわかる。超音波ビームを絞るためのものだということもわかる。でも、それが「??」 なのです。
何でビームを絞る必要があるのか?実際の検査とどう関係するのか? こういった事とつながっていないから重要性もわからない。 しかも、内容が“ぜ~んぜん”頭に入らない・・・
そこで、分解能を説明してあげたら、「あ~ なるほど!」と、すんなり理解できたみたいです。こういうところが大事なのです!
(分解能 ⇒ バックナンバーみてね!)