胆嚢癌
胆嚢癌は、自覚症状が出現したときにはかなり進展していることが多く,予後の悪い疾患です。
高齢者ほど発生頻度が高く、胆嚢結石を長期にわたって保有することによって胆嚢癌の発生頻度も高くなり、胆嚢癌症例での胆嚢結石保有率は70%以上にのぼります。ということは、腹部エコー検査で胆嚢結石をみたときには、そこで終わりにせず胆嚢壁をしっかり観察することが重要な事です。
胆嚢壁には粘膜筋板が存在しませんので、胆嚢癌は肝臓へ直接浸潤を起こしやすく、一般的に予後は不良です。
胆嚢癌は形態的に限局型、浸潤型、混合型に大別できます。組織学的な分類では腺癌が最も多く、他に扁平上皮癌、未分化癌などがあります。
限局型は胆嚢内腔へ腫瘤状、ポリープ状に隆起するタイプで腫瘤形成型ともいい、比較的他臓器への浸潤が起こりにくいため早期胆嚢癌のことが多く、浸潤型は胆嚢壁内に浸潤性に発育して、壁肥厚をきたすタイプで壁肥厚型ともいいます。混合型は、限局型と浸潤型の混合したもので、胆嚢部の巨大な腫瘤像として描出されます。 浸潤型と混合型は肝への直接浸潤が起こりやすく、発見された時にはすでに進行癌の場合が多いようです。
通常10mmを超えるポリープ様の病変は胆嚢癌を疑いますが、中には15mmを超えるコレステロールポリープも稀ではないので、10mm以上というのはあくまでも目安と考えましょう。また、無茎のポリープ様病変でエコーレベルの低いものは強く胆嚢癌を疑います。胆嚢癌の発生する部位の頻度は底部で高く、次いで体部、頸部の順です。
限局型
●胆嚢内腔へ隆起した腫瘤像としてみられる
●胆嚢壁へ広茎で付着する
●腫瘤部のエコーレベルは低下し、不均一なエコーパターンを呈す
●腫瘤部の辺縁の不整を呈することがある
●音響陰影は伴わない
浸潤型
●胆嚢壁の一部あるいは全体に不均一な肥厚を認める
●肥厚部のエコーレベルは低下している
●胆嚢壁の内腔側は不整である
混合型
●胆嚢の輪郭が不整型で不均一な低エコー腫瘤像を呈する
●周囲臓器(肝や腸)との境界が不明瞭化していることがある
胆嚢癌の進展度評価
超音波検査において胆嚢癌の進展度評価は、胆嚢癌の治療方針を決定するうえで重要です。胆嚢癌の進展度におけるチェックポイントは以下のとおりです。
●病変部が限局性か全体か
●病変部は不均一な低エコーパターンを呈すか
●病変部の表面は不整であるか
●肝や腸管との境界が不明瞭化しているか
●リンパ節転移が認められるか