初心者のための超音波検査セミナー
▽ボクも嫌いな「超音波の基礎」
『 音響増強 』
●「ちゃんと予習しました!」⇒ もう読む必要ありません。
●「え~ まだやってません!」
↓↓ 読んで下さい! ↓↓
音響陰影と音響増強には超音波の性質である「減衰」が深く関わっています。そして、前回 音響陰影は超音波の減衰が大きい部分の後側にできるといいました。
今回は、「逆に減衰が少ない部分があった場合はどうなるのでしょうか?」です。
減衰が少ない部分はエコー輝度が低くなります。(低エコー)そして、その後側には輝度の高い部分ができます。低エコー部位の後方にできる輝度が高い部分を「音響増強」とか「後方エコーの増強」と呼びます。
でも、ちょっと変ですよね。
一度発射した超音波ビームは減衰することはあっても、増強することはないはずです。なのに超音波装置の画像上では増強しているように見える。
なんででしょう・・・?
▽音響増強のしくみを考えよう!
「減衰の少ない組織 = 超音波が透過しやすい」ですね。その後方には強いままの超音波が届きます。
でも増強はしませんよ。 (^^)
そこには周囲と比較して強い超音波が届きますから、輝度は、より高く表示されます。と、ここまでは簡単に想像がつきます。
でもこれだけでしょうか?
実はここには「STC」と屈折による「超音波ビームの収束」が深く関係しています。
みなさん憶えていますか? 「STC」と「音響レンズ」
そうです! STCは超音波反射波を深い場所ほど増幅して表示するための技術でしたよね。周りより強い超音波が届いた上、STCで深い部分ほど増幅される
結果はどうなるか・・・
わかりますよね。
さらに嚢胞のような形だと超音波が屈折して後方で収束します。分解能でやった音響レンズと同じような役割ですね。
★「透過性が高い部分の後側」
★「STCによる増幅」
★「屈折による超音波の収束」
これらが複雑に絡み合って、後方エコーの増強ができるのです。
▽え~ じゃあ「肝血管腫」は?
肝血管腫の約20%に後方エコーの増強がみられます。肝血管腫は腫瘤の輝度が高い(白っぽい)ものや、低い(黒っぽい)もの、高い部分と低い部分が混在したものがあります。
腫瘤自体のエコー輝度が高いものでは、その後方エコーは増強していることが多いですね。逆に、エコー輝度が低い場合は後方エコーの増強はみられないことが多い。
今までの話からいくと「これって逆じゃん!」と思いませんか?
ややこしいので、もう一度整理しますね。
後方エコーの増強は、超音波の減衰がスゴク少ない部分、言い換えると透過性の高い部分の後側にできます。通常、減衰の少ない部分自体は低エコーになります。
ところが、高エコーの肝血管腫は、後方エコーの増強らしき高エコー部分が後側にみられます。逆に低エコーの肝血管腫には後方エコーの増強がみられない。
理解不能です! (**)
しょうがないから、肝臓の血管腫を調べてみました。(^^;
↓ ↓
答えは・・・
ここで言ってもよいのですが、次回のお楽しみってことにしたいと思います。(ちょっと意地悪ですか?)でも、みなさんも調べてみてくださいね!
「音響増強」いかがでした?
いつもこんなふうに考えながら検査をしていると、典型例とちょっと違う症例に出会った時にも慌てないですみます。だいたいどんな組織なのか見当がつきますからね♪
日頃から そこに映し出されている画像が「何でこうなっているんだろう?」と疑問を持ち、その意味を考える。考えてわからなかったら調べる。こういうクセをつけておくことが上達の秘訣です!
そうそう、まさかとは思いますが・・・
結石の後ろ ⇒ 音響陰影
嚢胞の後ろ ⇒ 音響増強
こんな憶え方はしてません・・・よね?
◆懺悔コーナー
久々の懺悔です。
このコーナーを楽しみにしている読者の方も意外に多いんです!「期待してます」とか「楽しみに待ってます」「早く謝れ!」さすがに「訴えてやる」はありませんでしたが・・・ (^^;
たくさんメールをいただきました。(ありがとうございます!)でもサボっていたわけではなく、最近ヘマをやってないんです。(ホントです!)
▽物じゃありません!
病院の中での会話
看護士:「今日○○さん 心電図の検査があるんですが・・・」
「いま検査できますか?」
検査室:「はい大丈夫ですよ」「○○さん降ろしてください」
看護士:「じゃあ今から降ろします」
「ストレッチャーで降ろしますね」
検査室:「じゃあ○○の心電図室に降ろしてください」
こんな会話が病院の中では「当たり前」のようにされていました。でも患者さんは“物”じゃありません。「降ろす」は、ないでしょっ!
ゴメンナサイ m(__)m
もちろん今は「これから○○さん 案内しま~す」といってます!
◆編集後記
いやぁ、今回は 長くて 難しくて m(__)m
でも、超音波診断にとっては、アーチファクトってとっても大事な部分ですからね。 特に音響陰影、音響増強には超音波像を理解する上で“大きなヒント”がいっぱい詰まっています。
基本的に超音波診断は『白黒』の世界ですから!