超音波診断はリアルタイムだからいいんです!

初心者のための無料超音波セミナー

やっと太陽が戻ってきました ^^

このままGWまでもつといいですね!

まあ、今年もGWのない私にゃ関係ありませんが。。。

(T T)

さて、このメルマガも発刊から2年が過ぎました。

(スゴイ!)

当時のものを読み返していて、ぜひみなさんに
ご紹介したい話がありますので、今回はそれを。。。

まだこの頃は読者の方が104人だったんですね~ ^^

超音波診断はリアルタイムだからいいんです!

以前に紹介した私の“師匠”のお話です。

48歳の男性。

軽い腎機能の低下を指摘され、腹部超音波検査の依頼がやってきました。腎臓のスキャンを行う前に腎の超音波像を把握しておきましょう。

正常腎の超音波像は、エコーレベルの高い腎中心部エコー(※)があります。腎臓の実質は肝臓のエコーレベルより低いか等しい。

※ 腎洞内の血管、腎盂、腎杯、神経、脂肪などにより強い反射が生じ、central echo complex、略してCEC とも呼ばれる。

さらに腎実質では皮質よりエコーレベルの低い髄質を認め、皮髄境界を弓状血管が走行しており、弓状血管はスキャンのされ方により2本線(tram-line)であったり、近接する2点であったりする。弓状血管より末梢はBモード像では認識できないが、カラードプラとくにパワードプラでは小葉間動静脈も良く見える・・・等々。

このようなことを頭に描きながら、腎をスキャンしてみる。患者さんの腎髄質は皮質よりエコーレベルが高く、高エコーとなっており、一部音響陰影も出現している。これは、いわゆるhyperechoic medulla (腎髄質高輝度エコー像)の所見であり、音響陰影も出現していることより、石灰化を来たしていると考えられ、medullary nephrocalcinosis の診断がつく。

この原因疾患は下記の如く、様々なものが鑑別に上げられる。

痛風腎・Lesch-Nyhan Syndrome・副甲状腺機能亢進症・Wilson disease・giycogen storage disease type XI ・サルコイドーシス・ビタミンD過剰症・骨髄腫・乳頭壊死・medullary sponge kidney・ミルク-アルカリ症候群・クッシング症候群・シェグレン症候群・Bartter’s syndrome・原発性アルドステロン症・Pseudo-Bartter’s syndrome

これで超音波検査を終了し、medullarynephrocalcinosis の診断とし、その鑑別疾患を上げるのは、スクリーニングとしての超音波検査の域にとどまる。さらにリアルタイムの利点を生かし、精査としての超音波検査を行なえば、確定診断をつけることが可能である。実際、私の経験上腹部領域の大方は超音波検査のみで確定診断がつくのである。

そこで、次にどうするか。

プローブの切り換えスイッチを押し、高周波のものに変化させて、頸部を観察してみる。はたして、甲状腺左葉、下極側の背側に接して、楕円体状の低エコー腫瘤を認めた。

これにより上皮小体の腺腫であることが判明した。検査中、上皮小体が腫大しているかも知れないということを念頭におき、その上で頸部を精査しなければ、hyperechoic medullaの原因もわからなかったわけで、これは超音波検査が有用であるということを示す一方、検者の技量により、その診断が著しく左右されるということも示している。

*内科系では副甲状腺というが、正確には上皮小体が正しい。というのは、副甲状腺とは甲状舌管が降下して甲状腺を作る時、その途中に甲状腺と同じ組織が遺残することがあり、これを副甲状腺(accessory thyroid)と呼ぶからである。

どうでしょうか?

内容が難しいと思いますので、ちょっと解説しますね。

まず、検査を始める前に対象部位の正常エコー像を頭の中で整理することが大切です。もちろん解剖学的な知識も知っておかなければなりません。

そして実際の検査を始めます。

エコーで正常ではない所見があった場合は、そのエコー像をしっかり観察しましょう。

今回の例では、

1 腎髄質は皮質よりエコーレベルが低いはずなのに逆転している
2 一部に音響陰影をともなっている

ですね。

次に検査で得られた所見から、原因疾患を考えましょう。

これには病気や疾患に関する知識が必要です。

そして、ここである程度の結果がでました。

患者さんの腎髄質はエコーレベルが高く、音響陰影もともなっていることから石灰化をきたしていると考えられ、これが原因で腎機能が低下しているのではないか?

実際の検査では、ここで終わってしまう場合がほとんどですが、本当の超音波診断は“この先”が重要なのです。腎髄質に石灰化をきたす疾患を考え、さらに検査を進めることによって、さらに根本的な原因を特定することができます。

これは「リアルタイム検査」だからこそできるのですね。

実は、この患者さんの腎機能低下の原因は上皮小体の腺腫でした。スクリーニング検査としては「腎髄質の石灰化による腎機能低下」これでも充分にエコーの役割を果たすのでしょう。

でも超音波診断には、まだまだ先があります。そして、検者の技量により診断が著しく左右されてしまうのです。ここまでの診断ができるまでには、「知識」が必要です。「技術」が必要です。さらに「経験」が必要です。

たいへんな道のりですね ^^;

でも、この話を聞いてから私のエコーが始まったのです。。。

◆編集後記

メルマガ発行から2年・・・

進歩なし ^^;

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